補助金や助成金で開業資金を調達できる?その方法やメリット・デメリット

開業資金を準備する際に融資と並んでよく検討されるものに補助金・助成金があります。 そこで今回は、開業資金を補助金や助成金で調達する上でのメリット・デメリットをご紹介したいと思います。

(1)補助金・助成金とは

補助金・助成金とは国や自治体が整備している制度で、申請をして審査が通ると返済不要の資金を受け取ることができます。 また、助成金は雇用関係、補助金はそれ以外の目的(企業の生産性の拡大など)で募集・支給がされるという特徴があります。 さらに助成金は条件を満たせば受け取れる可能性が高い一方、補助金はあらかじめ申請期間や定員が設けられていることが多く、補助金の方がハードルが高い印象です。 開業資金の調達方法として活用しやすい補助金・助成金には、『IT導入補助金』や『ものづくり補助金』、『小規模事業者持続化補助金』『キャリアアップ助成金』などが存在します。

(2)補助金・助成金で開業資金を調達するメリット

続いて開業資金を補助金・助成金で調達するメリットについて確認していきましょう。

①多くが返済不要で受け取れる

補助金・助成金というとまず挙げられるメリットの一つが、『多くが返済不要で受け取ることができる』という点です。 融資であれば借入返済に加えて利息の支払いが求められますが、補助金・助成金ならそれが不要なのです。 一部、補助金・助成金の交付後に一定以上の利益が出た場合にはその分の補助金・助成金を返還するという条件がある場合もありますが、その条件に当てはまることはあまり無いので心配する必要は無いでしょう。

②条件や審査次第で経費等の一部を補填できる

補助金や助成金には、事業で必要となった経費についてその一部を補填するという性格があります。 そのため、補助金や助成金の条件に当てはまり審査に通れば、経費の一部を補填できるというのがメリットとなります。

(3)補助金・助成金で開業資金を調達するデメリット

返済不要の補助金・助成金ですが、開業資金をそれらで賄うのにはデメリットも存在します。

①募集から審査・交付決定まで時間がかかる

まず一つ目のデメリットは、補助金・助成金の募集から審査、そして交付決定まで相当の時間がかかるという点です。 特に“実際にかかった経費の〇割を補助する”といった形式の補助金・助成金に申請する場合、先に設備投資などの出費をしてから申請準備を始めるという流れになります。 また申請から交付決定まで半年~数か月かかることも珍しくないので、その分資金調達も遅れてしまいます。

②申請や審査に際して書類を複数用意しなければならない

補助金や助成金の申請については規定の書類を揃えて提出しなければならず、それが大きな負担になるというデメリットもあります。 特に事業計画書を求められることはかなり多く、申請者本人だけでは正確なものが作成できない場合も。 雇用関係の助成金であれば社会保険労務士、それ以外の補助金であれば税理士や会計士といった専門家に書類の作成を依頼するケースが増えています。

③特に補助金は必ずしも交付されるとは限らない

冒頭でも少し触れましたが、特に補助金は申請をしたからといって必ずしも交付されるとは限りません。 時間を取って難しい申請書類を揃えたあげく、補助金を一円も受け取れなかったという事態も十分にあり得るのです。 また補助金は“実際にかかった経費の〇割”という形で交付の上限が決められていることが多く、かかった経費全額が補填されるわけでもありません。

(4)補助金・助成金のデメリットを理解した上で利用しよう

ここまで、補助金や助成金で開業資金を調達することのメリット・デメリットについてご紹介してきました。 返済不要の資金が期待できるこれらの制度ですが、資金調達までのスピード感や手間といった面を考えると少し融資よりも優先順位は下がると言えるでしょう。 自己資金や融資によって当面の運転資金を確保した上で当てはまる補助金・助成金があれば利用する、という使い方がおすすめです。


【著者プロフィール】久保 智也(公認会計士・税理士)|クボトモ税務会計事務所 代表
2021年よりクボトモ税務会計事務所を設立し、税務会計顧問、資金調達支援、事業計画策定支援及びM&Aサポートを提供している。 大手監査法人にて、金融機関を中心に政府系金融機関、地方銀行等に対する監査業務に従事。また、 IFRS監査、内部統制監査、SOCR業務等にも従事していた。 大手アドバイザリー会社では、M&Aトランザクションサービスを中心に業務を提供しており、金融機関、ベンチャー企業及び事業会社に対する財務デューデリジェンス業務及び企業価値評価にも従事していた。