【医業経営コラム】診療所開業・クリニック開業までのスケジュール

診療所・クリニックの開業を検討する際に、何から手を付けていけば良いのかわからない先生方が多いのではないでしょうか。
本Blogでは、医療専門の税理士が診療所・クリニックの開業に際して、どのような手順で何を準備すればいいのかを記載いたします。診療所・クリニックの開業の一助になりましたら幸いです。

【開業までのスケジュール】

まず、診療所・クリニックの開業までのスケジュールを把握することが重要です。
既に開業を決定した先生、これからクリニックの開業を検討する先生と事情は様々かと思いますが、ご自身の状況に即して、開業予定時期から逆算して準備を始めます。
およその目安としては開業予定時期より1年前~1.5年前より準備を始めるべきとされております。
開業までの準備を全て先生ご自身で行うことは稀かとは思いますが、スケジュールを把握することでスムーズな開業準備を行うことが出来ます。
スケジュール
※上記、図表は、都市型の開業モデル(テナント物件での開業)となります。診療所・クリニックの建設を検討されている場合は、上記モデルとスケジュール感が異なってきますのでご了承ください。

図表にて、開業までのスケジュールを把握頂けたかと思いますので、項目毎に解説していきます。
経営理念・経営戦略と聞くと一見難しいように感じますが、「どのような診療所・クリニックにしたいか」「ご自身が目指す診療所・クリニックにするためには、具体的にどうすればよいか」と置き換えて考えて頂ければ具体的な像が出来上がってくると思います。
経営理念は、診療所・クリニックを経営していく上での指針となります。開業の動機と併せて時間をかけて検討して頂く必要があります。

また経営戦略を検討する際には、対外的にご自身の診療所・クリニックをアピールすることを念頭において検討して頂くことをお勧めしております。開業後、数多ある診療所・クリニックの中からご自身の診療所・クリニックを選んでいただく為に、アピールポイントを作ることを意識して経営戦略を策定していきます。アピールポイントと聞くと一番に思い浮かぶことは、専門性かと思います。ただ、専門性が仮になくとも、企画力次第でアピールポイントを作ることは十分可能です。
例えば、「不眠」や「頭髪の悩み」に強いといった症状への対応をアピールポイントにしたり、「丁寧な説明」や「患者様をお待たせしない」といったサービス面をアピールポイントにしたりと様々なアプローチが可能です。
開業後、アピールポイントを基に集患をしていくこととなりますので、開業準備段階でアピールポイントを複数作っておくことは重要と考えます。

多少脱線した話になりますが、経営理念・経営戦略の検討の際に、将来、医療法人化する可能性があるかを併せて考えて頂きたいと思います。医療法人化については、今後別のBlogにて記載する予定となりますが、個人での開業準備時に医療法人化を検討することによって、医療法人化の際に余計な手間や費用が発生しなくて済む場合があります。
診療所・クリニックの開業において、物件の選定はとても重要な要素となります。物件が決まらなければ、その後の準備を進めることは難しくなります。また、開業場所の良し悪しによって開業後の経営状況が異なってくる場合があります。ただ、開業地がとても重要な要素とはいえ、全てがご自身の理想通りの物件に出会える確率は限りなく低いです。

その際は、「①経営理念・経営戦略」で検討した内容に照らし、妥協すべきではない条件、妥協すべき条件を精査し、物件の選定を行ってください。物件情報に関しては、不動産仲介業者、開業コンサルタント、調剤薬局、商業施設専門リーシング会社等より入手することが一般的です。

物件の選定に際しては、診療圏調査を忘れずに行ってください。診療圏調査を行うことで、開業地における見込患者数を把握することが可能となり、その後の事業計画の策定に有用な情報となります。診療圏調査は開業物件の選定において、重要な指標となりますが、同時に診療圏調査には限界があることも覚えておいて下さい。診療圏調査の結果は、あくまで机上の調査結果であり、実態と異なる結果が出る場合があります。また、近隣の競合診療所・クリニックの実力が加味されておりません。
開業物件が決定したら、次は事業計画策定・資金調達の準備です。事業計画を策定することによって、開業に必要な資金を具体的に算定します。開業に必要な資金は設備投資資金と運転資金に分かれます。設備投資資金は、物件契約費用・内装工事費用・医療機械費用・等の資金を指します。運転資金は開業後収入が安定するまでの資金であり、開業後の経費や院長の生活費等の資金を指します。

具体的な資金調達額を算定したら、金融機関と借り入れ交渉に入ります。診療所・クリニックの開業時の資金調達先は地方銀行や信用銀行、日本政策公庫、医療福祉機構が対象となることが多く、所謂都市銀行が資金調達先になることは稀です。
税理士の選定時期については、開業準備の方法によって異なってきますが、本Blogでは一般的なケースについて記載します。

事業計画を先生ご自身で作成される場合
この場合、税理士の選定時期は開業前3~6カ月程度を目安に税理士を選定下さい。

事業計画を税理士と共に作成される場合
③の事業計画策定時期と同程度の時期に税理士を選定し、税理士と相談しながら事業計画を作成します。資金調達に伴う事業計画に関しては、開業コンサルや医療機器メーカーに依頼することで作成して頂ける場合もあります。しかし、開業後の関与を考えると事業計画は開業後のお金回りを担う税理士と共に作成することをお勧めしております。

次に、社労士の選定時期ですが、こちらは求人関係に深く関わってきますので、求人募集を出す前(開業時期の4カ月前を目安)までに選定頂くことをお勧めいたします。人事・労務関連の問題は、診療所・クリニックを運営していく上で大きな悩みの種になります。開業前に信頼できる社労士を選定しておくことでスムーズな診療所・クリニック運営の助けになります。
物件が決定したら、医療施設の設計・施工と医療機器の選定を行います。内装を決定する際には、広さや動線を確保するために、同時並行的に診療所・クリニックで使用する医療機器も選定すると良いと思います。
⑤にて内装図面が確定したら、管轄の保健所に図面を持ち寄り、この内容で問題ないかの事前相談を行います。事前相談に関しては、診療所の開設手続き上、必須とはなっておりませんが、必ず行うようにしましょう。事前相談を省略していると、実際の開設手続きの段階で修正工事の指導を受け、開業日に間に合わなくなる…なんて場合もあります。

診療所開設届けについては、制度上「開設した日から10日以内に所管の保健所に届ける」となっております。こちらに関しても、いざ提出する際に書類が整っていない等の理由ですんなり受理されない場合もありますので、上述の事前相談の際にしっかりと確認をしておきましょう。

医師会については、昨今加入されない先生方も増えて来たような気がします。医師会加入のメリット・デメリットを精査し、メリットが大きいと判断される場合は、医師会に加入しましょう。
開業予定日のおよそ半年前に、採用条件の検討をします。診療所・クリニックの周辺相場や診療日に合わせて、必要人数・職種・採用条件の検討を行います。社労士が関与している場合は、社労士に各種条件や相場等を相談しながら、採用条件を検討するとよいでしょう。

開業予定日の3~4か月前に、実際の求人募集及び採用面接を行います。こちらも社労士が関与している場合には、時には採用面接に立ち会って頂くこともあります。
開業予定日の1か月前には、開業時職員の採用は確定している段階かと思います。
半月~1か月をかけて、実際に診療所・クリニックが開業した後を見据えて、普段のオペレーションなどの研修を行います。
開業予定日のおよそ半年前に、HPを作成してくれる業者を選定します。ご自身の希望されるHPのイメージを伝え、開業予定日の3~4か月前にHPを作成、1~2か月前にHPの完成となります。
昨今では、HPが集患の良否の1因を担っております。HPを作成しただけで、満足せず、一定の頻度で情報を発信することも重要となります。