自己資金のみで事業を始めるメリット・デメリットとは

自力で事業をする場合に必要となる開業資金。 もしも借入をせずに自己資金だけで開業できるとしたら一見メリットしか無いように思えるかもしれません。 しかし、実は自己資金のみで事業を始めるのにはデメリットも存在するのです。 今回は、自己資金のみで開業をするメリットとデメリット、必要な自己資金の目安についてご紹介したいと思います。

(1)自己資金のみで事業を始めるメリット

自己資金のみで開業することのメリットは次の三つ。 それぞれ理由を説明してきましょう。

①事業計画をより具体的に自由に決められる

事業を展開していく場合、事前に立てる事業計画の内容はとても重要です。 もしも開業資金の多くを融資でまかなう前提で事業計画を立てた場合、万が一融資が下りなければ計画を最初から立て直さなければなりません。 借入に頼らず自己資金のみで開業する場合、この事業計画の内容を自由に決められるというメリットが生まれます。

②毎月の返済が不要で経営に余裕が生まれる

開業に際して借入を行った場合、毎月何とか生み出した利益の中からさらに借入返済をしていく必要があります。 損益的には毎月黒字だったとしても借入を返済するお金が無ければ最悪の場合『黒字倒産』ということにもなりかねません。 その点、自己資金のみで開業する場合には当然ですが毎月の借入金返済が発生しないため、経営に余裕が生まれます。

③店舗型の場合オープンのスケジュールが立てやすい

飲食店や美容院などの店舗型の事業の場合、自己資金のみで開業できるというのはオープン日を決める上でもメリットがあります。 もしも融資を受ける場合、融資が遅れれば店舗のオープン日も遅れますし、融資が受けられなければ事業自体が頓挫しかねません。 自己資金のみで開業する場合にはこういった事態は起こらないでしょう。 店舗型の事業を考えている方は特に自己資金をできるだけ多く用意するようにしましょう。

自己資金のみで事業を始めるデメリット

①開業資金全額を自力で貯めるのには限界がある

自己資金のみで開業することの最大のデメリットは、そもそも開業資金全額を自力で用意することには限界があるという点です。 給料の中から少しずつ貯めるにしろ親族からの贈与を受けるにしろ、数百万~数千万円もの開業資金を自力で用意するのは現実的ではありません。 自己資金を貯めている十数年の間にビジネスチャンスもやる気も逃してしまうかもしれないのです。

②事業の規模が小規模になってしまう可能性がある

開業資金を自己資金でまかなおうとする場合、どうしても事業の規模自体が小規模になってしまうという恐れもあります。 飲食店や美容院などの場合、ある程度の規模の店舗でないと毎月安定して利益を生み出すことは難しくなってしまいます。 パソコンなどの設備が必要な事業の場合、設備資金を節約してしまうと思うような価値を生み出せず事業にならない恐れも。 できるだけ多くの自己資金を用意するのは理想ではありますが、自己資金が足りないから事業規模を縮小するというのは少し本末転倒と言わざるを得ません。

まとめ:自己資金と融資をうまく組み合わせて開業資金を調達しよう

ここまで、自己資金のみで事業を始めることのメリットとデメリットをご紹介してきました。 自己資金だけで十分に開業資金を調達できるに越したことはありませんが、融資制度をうまく使えば起業までの期間を短くしたり効率的に利益を出しやすくなったりすることにもつながります。 日本政策金融公庫の制度を利用すれば2%前後といった低金利で融資を受けられますので、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。


【著者プロフィール】久保 智也(公認会計士・税理士)|クボトモ税務会計事務所 代表
2021年よりクボトモ税務会計事務所を設立し、税務会計顧問、資金調達支援、事業計画策定支援及びM&Aサポートを提供している。 大手監査法人にて、金融機関を中心に政府系金融機関、地方銀行等に対する監査業務に従事。また、 IFRS監査、内部統制監査、SOCR業務等にも従事していた。 大手アドバイザリー会社では、M&Aトランザクションサービスを中心に業務を提供しており、金融機関、ベンチャー企業及び事業会社に対する財務デューデリジェンス業務及び企業価値評価にも従事していた。