【医業経営コラム】医療法人化に関して<後編>

前回の<前編>では、医療法人とは何か、その仕組みや基本的な制度について解説しました。
<中編>では、医療法人化のメリット・デメリットを整理し、法人化の良し悪しを解説してきました。
今回は、<後編>として、実際に「医療法人化を検討すべきタイミング」や「法人化までの流れ」、さらに「実務上の注意点」についてご説明します。

■医療法人化を検討すべきタイミング

医療法人化は、単に節税のためだけではなく、事業の成長や将来の承継も見据えて判断するべき重要な選択です。以下のようなタイミングで、法人化を検討するケースが多く見られます。

・年間の所得が一定額(例:2,000万円〜2,500万円以上)に達したとき
・診療報酬が安定し、経営が見通せる状態になったとき
・家族に診療所を引き継ぐ意向があるとき(事業承継)
・複数の診療所を展開したいと考えているとき
・老後資金や相続対策を早期に始めたいと考えているとき

法人化のタイミングは、「税金が高くなってきたから」といった理由だけでなく、将来のキャリア設計や家族とのライフプランを考える中で、慎重に見極めることが大切です。その意味では医療法人化を検討すべきタイミングは、個人でのクリニックを開設したタイミングで医療法人化を検討しておくことをお勧めしております。

■医療法人化の手続きとスケジュール

医療法人化には、以下のような手続きが必要です。通常、申請から法人設立までには半年以上かかります。

1. 都道府県との事前相談(設立スケジュールの確認)
2. 定款・設立趣意書・事業計画書等の書類作成
3. 医療法人設立認可申請の提出
4. 認可の取得(都道府県知事による)
5. 法人設立の登記
6. 開設許可の変更(個人から法人へ)
7. 保険医療機関の再届け出や各種届出

医療法人化は相当程度時間がかかる為、申請は余裕を持って行うのが理想です。
また、都道府県によって申請スケジュールや提出書類の細部が異なるため、地域のルールを事前に確認することも重要です。
(参考:医療法人設立、解散、合併認可等に係る年間スケジュール(令和6年度)|医療法人の設立・運営|東京都保健医療局)

■法人化後の実務的な注意点

医療法人化後は、以下のような実務的な管理が求められます。

・毎年の決算報告書類の都道府県への届出
・「資産総額変更」の登記(毎年)
・「理事長の重任」登記(2年ごと)
・経営情報等の届出義務(2023年8月以降)
・社会保険(厚生年金・健康保険)の適切な管理
・法人資産と個人資産の明確な区分

これらをスムーズに進めるためには、税理士や社会保険労務士等の各士業との連携が重要になります。

■よくある失敗とその対策

医療法人化後に「思ったより手続きが煩雑だった」「生活費が自由に使えなくなった」といった声もあります。これは、法人と個人の資産が分離されることへの理解不足によるものです。

<対策例>
・個人事業主のうちから、生活費と事業資金を明確に分けて運用する
・給与(役員報酬)ベースで生活設計をする習慣を身につける
・専門家に定期的な相談を行う

■医療法人化シミュレーションのすすめ

「うちは法人化すべきか?」「節税効果はどの程度あるのか?」 このような疑問は、シミュレーションを行うことで具体的に数値化できます。
当法人では、開業医の方に向けて無料の医療法人化シミュレーションをご提供しています。税負担の比較、退職金制度の活用、将来の事業承継まで視野に入れたアドバイスを行っています。
医療法人化は、節税だけでなく、長期的な経営安定や家族・従業員の安心にもつながる制度です。とはいえ、デメリットや制約もあるため、慎重な判断が欠かせません。
法人化を検討されている先生方は、まずは一度、具体的な数値や将来設計をもとにしたシミュレーションを受けてみてください。
ご相談や無料シミュレーションをご希望の方は、お気軽にお問い合わせください!